2014年8月30日土曜日

日本人論2-頑張るボトムとダメトップ


 前回、「讃えられる”GAMAN”と利用される我慢」を書いた。これは言いかえれば、頑張るボトムとダメトップにつながる。卑近な例では、会社の頑張る部下とダメ上司となる。〝叱ってなんぼ、叱られてなんぼ″、〝無理難題をなんとかするのがサラリーマン″。 これらの言葉は、まさに頑張る部下とダメ上司を象徴しているようにみえる。というのは、上司は部下を頑張らすことによって成果をあげて、本来の上司の仕事をしていないと考えられるからである。

 上司の上には上司がおり、更にその上に上司がいる。縦長の階層になっているなかで、下層部を頑張らすことが、上層部の仕事になっている。このため中間管理職は上から下まで、管理され管理することに一所懸命になって、上層部が本来すべきとされている経営がおろそかになっているように感じる。

  • 私が所属していた半導体業界は、アメリカに巻き返され、台湾に負け、韓国に負け、今は見る影もない。国際協業体制など分散化が進んでいたのに垂直統合に拘って負けた。
  • 電機製品は機能的には豊富であるが、市場性に欠け、国内で他国製品の進出を許している。
  • 水ビジネスなどは、フィルターなどは優れているが、総合的なシステム販売で負ける。

 結果的に、動向が見えていない、市場が見えていない、システムが見えていないということになる。また、管理職はたくさんいるのに、有効に機能していないともいえる。

 何故このようにダメ管理職になるのか。私は、江戸時代のお上と下々意識が今なお強く残っているせいではないかと思う。下々はお上のすることに口出しをしてはいけない、従っているだけ。お上が考えるべきことは一切考えない。

 現在においても、上のすることにほとんど口出しせずに従っている。このため下にいけばいくほど、視野が狭くなる。上にいっても無意識に視野に制限がかかって、あまり広がらない。社長になっても明日のことより、今日の利益のため、下を頑張らすことにエネルギーを注ぐ。

 上にいけばいくほど、おえらい意識が強くなって、部下教育のつもりのお叱りや説教がまかり通り、本来すべきことを行っていない。

 結果的に、大局的に将来をみる、市場をみる、システムとしてみる、などが不十分になり、他国の追い上げを許し、そのあげく負けてしまっている。

 管理され管理するのは、会社だけかと思えば、どうもそうでない。学校の先生は、書類作成などの雑務が多く、教育ができていない。 ”とにかく教育をさせてくれ”とは、真面目で真摯な先生の叫び声である。

 警察官の不祥事が、マスコミに取り上げられる毎に検察官への管理がきつくなり、最近では休日のデートまで報告する必要があるとか。

 日本全体が、無駄の多い、無味乾燥な縦長の管理構造が蔓延し、大局的にものをみたり、考えたりすることが不足している。

 どうすればよいのか。

 私はまず、上下意識をなくすべきだと思う。

   なぜあなたは、部下と平気で言うのか。部下は馬鹿であなたはそれほどえらいのか。なぜあなたは上司と平気で口にするのか。上司はそれほどえらくて、あなたは馬鹿なのか。

 上下意識は、いまや不要であろう。あるのは役割分担であろう。部下という言葉も、上司という言葉も死語にしろ、それほど卑屈になるな、それほど威張るなといいたい。
 未熟だから部下だというのであれば、早く教育して一人前にしろといいたい。

 管理という言葉もなくすべきだと思う。管理の英訳は、manage となっている。 manage は、「うまく処理する」という意味で、日本でいう管理の意味はない。

 次にすべきことは、縦長の管理構造を潰すことだと思う。全ての管理職をマーケット部門や事業戦略室などにまわして、市場調査や動向調査などを充分に行ってもらう。

 いまのままでは、日本全体に大局的に考える人の絶対数が不足している。質も量を足りていない。

 上下意識をなくす、縦長の管理構造を廃止し、大局的に考え行動する組織にすれば、日本本来の強みである現場力と大局観による将来力を組み合わせられることになり、他国に負けることのない強靭な社会ができると考えられる。

日本人論1‐讃えられる”GAMAN”と利用される我慢

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