2013年11月3日日曜日

地球温暖化メカニズム考察(10)


地球温暖化メカニズム考察(1)、地球温暖化は、現代科学が不得手とするもののひとつ
地球温暖化メカニズム考察(2)、地球温暖化懐疑論者の大きなまともな疑問
地球温暖化メカニズム考察(3)、地球温暖化は、平衡論では説明できない
地球温暖化メカニズム考察(4)、地球温暖化は、ポジティブ・フィードバックのオンパレード
地球温暖化メカニズム考察(5)、植物の光合成がなければ、地球は熱暴走
地球温暖化メカニズム考察(6)、現代社会は、植物をも減少させている。このままでは地球は熱暴走
地球温暖化メカニズム考察(7)、地球には氷河期があった。寒冷化メカニズムは?
地球温暖化メカニズム考察(8)、46億年地球史概略
地球温暖化メカニズム考察(9)、先カンブリア時代の気候変動
地球温暖化メカニズム考察(10)、先カンブリア時代の気候変動2

地球温暖化メカニズム考察(10)-先カンブリア時代の気候変動2


 地球全体、まるごと凍ってしまう、南極・北極はもちろんのこと赤道まで氷に覆われてしまう、そのような状態を全球凍結という。全球凍結が実際に、この地球で起きたことがある。

 全球凍結の可能性は1992年に発表され、1998年ハーバート大ホフマン教授が全球凍結を証明する調査結果を発表、その発表は反響を呼び、以降、研究が重ねられ、現在、以下のように考えられている。
 先カンブリア時代、少なくとも3回地球は全球凍結した。22億年前、7億年前、そして6億年前。全球凍結では、地表温度は-50℃に、氷の厚さは1,000メートルに達し、全球凍結期間は約1,000万年に及んだという。全球凍結の後、今度は逆に超温暖化状況になり、地表温度は+50℃になったとされている。

 地球全球凍結は、今まで述べてきた寒冷化スパイラルの極限状態であり、超温暖化は、温暖化スパイラルの究極の姿であると考えられる。

 寒冷化のトリガー(引き金)は、大気中のCO2の減少であり、温暖化のトリガーは大気中のCO2の増加である。全球凍結のトリガーとなったCO2減少は、どのようにして起きたのだろうか。超温暖化のトリガーとなったCO2増大はどのようにして起こったのだろうか。

 22億年前、7億年前の全球凍結に至ったときのトリガーは大陸分裂による大気中のCO2減少であったと考えられている。大陸分裂とはどういうことなのか。大陸分裂で何故CO2が減少するのであろうか。

 大陸分裂を説明する前に、大陸移動を説明しなければならない。大陸移動説は1912年Wegenerによって唱えられたが、長い間無視されていた。1960年代になって、大陸は海底にあるプレートと呼ばれる岩盤に押されて移動するということがわかってきた。プレートは海嶺と呼ばれる海底火山から噴き出たマグマで形成され、海底火山から継続的に噴火するマグマによって押されプレートは移動する。この移動するプレートに押され、大陸も移動する。このメカニズムはプレートテクトニクスと呼ばれている。

 1980年代になって、海底火山から吹き出すマグマは、地球内部の核から上昇したものであると云われるようになった。地球内部の核から上昇したマグマ(プリュームと呼ばれる)は、プレートを形成し、プレートは新たに地表まで上昇してくるプリュームによって押され移動する。

 現在の地球を例にして説明すると次のようになる。太平洋の真中より東よりに南北に海嶺がはしっている。この海嶺は、プリュームの上昇が引き起こす火山活動によってできた山脈である。海嶺を構成するマグマは地球の深部の核より上昇したものである。この上昇していくマグマはホット・プリュームと呼ばれている。地球内部から上昇したプリュームは、地表(海底)で東西に分かれ重いプレートになって、東側はアメリカ大陸を東に押し、西側はハワイ諸島や日本を西に押し寄せていく。 日本の火山は、地球深部から湧き上がるプリュームによるものでなく、地表近くのマグマだまりから噴出したものである。

 大陸を構成する岩盤は、堅いが、海底の岩盤(プレート)よりは軽い。このため、日本を西側に追いやろうとするプレートは、大陸と同じ岩盤を構成する日本列島にあたって沈み込んでいく。この沈み込んでいったプレートは、やがて地球内部の核に向かい、下降していく。これは下降プリュームとかコールドプリュームとか呼ばれており、このプリュームは核に吸い込まれていく。核中のマグマは、流動しており、核からは、マグマがホット・プリュームとして、地表に上昇、海底火山から地球の表面(海底)にでていく。

核 → 上昇プリューム → プレート → 下降プリューム → 核

 このような大循環が形成されている。この大循環メカニズムをプリュームテクトニクスという。この大循環の周期は数千万年といわれている。

 大循環は、大陸移動を引き起こすだけではない。大陸を合体させたり、大陸を分裂させたりする。
 現在、地球には5大陸があるが、地球46億年の歴史の中での大陸変動は以下の様に考えられている。
 
 地球上に一つの大陸のみ、そのような大きな大陸は超大陸と呼ばれるが、そのような超大陸ができては分裂していった。全球凍結が起きなくなった約5億年前から現在に至る間には1回、恐竜が闊歩していたころバンゲアという超大陸があり、その後、分裂し、現在の5大陸になった。
 40億年前から5億年前の間には、数回、パンゲアのような超大陸ができては、分裂していったと考えられている。

 超大陸の分裂時に起きる化学反応が全球凍結のトリガーとなったと云われているが、その化学反応に言及する前にプリューム大循環で定常的におきている化学反応の概略を示す。

 海嶺(海底火山)から、プレートとなるマグマが流れ出るとともにCO2を吹き出す。各種金属も噴出し、海水中でイオンとなる。CO2は、海水H2Oと反応し、炭酸水素イオンHCO3-となる。

 岩石の風化によって、岩石から金属が分離し、雨・川によって、海水に金属イオンが流れ込む。火山からでてきたり、風化・浸食でできたりした海水中の金属オンが炭酸水素イオンと結合して炭酸塩岩となる。この炭酸塩岩はプレートの一部となり、プレートと一緒に旅をすることになる。プレートは大陸とぶつかり、大陸の下にもぐりこんでいく。このとき炭酸塩岩は圧力を受け、大陸中のSiO2と結合するなどして変質する。

 この変質した岩石を含んだプレートは、下降プリュームとなって地球の核に向けて下降し核に吸収されていく。下降プリューム中の岩石は核の中で分解され、マグマはCO2ガスを含んだマグマとなり、核の内部を移動する。核中のマグマは、いずれ上昇プリュームとなって地表の海嶺にむかって進む。そして、マグマと一緒にCO2が放出される。これがプリューム大循環で起きる化学反応の概略である。図中に化学式の一例を示している。

 プリュームテクトニクスによると大陸移動によって、大陸が合体し、超大陸ができる。そのできた超大陸にプリュームが上昇し、大陸が分裂を始める。近年の研究では、約2億5千万年前には、超大陸の下からスーパープリュームと呼ばれる巨大プリュームが上昇して、大陸が分裂していったとみられている。超大陸ができると必然的に大陸をめがけてプリュームが上昇するのか、その時のプリュームはスーパープリュームなのかなどの疑問は残るが、いずれにしても超大陸ができては、分裂していったと考えられている。

 下図に2億5千万年前に大陸分裂に至ったスーパープリュームの概念図を示す

 大陸が分裂すると、寒冷化が起きる。そのメカニズムを以下に説明する。
 太古の地球では、大気中はN2とCO2が支配的である。海の中にもCO2が溶けHCO3-イオンになっている。大陸分裂により海と陸地の境界線が増える。境界線が増えると陸地に雨が降りやすくなり、陸地の浸食が進む。その結果、陸地の風化で生じた金属が海の中に多量に溶け出していく。この多量に溶け出した金属イオンが海水中の炭酸水素イオンと結合し、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩岩となる。 海水中から炭酸水素イオンHCO3-が多量に減ると大気中から海中にCO2が溶けていき、減った炭酸水素イオンを補充する。このため、大気中のCO2が減る。大気中のCO2が急に減ると、これが寒冷化のトリガーとなって、寒冷化スパイラルに突入する。

 H2OとCO2のペアは、温暖化するときは温暖化を加速させるが、寒冷化する時は寒冷化を促進する。金属イオンが多量に海水中にある場合、温度が下がれば海水中のCO2許容量が増え、金属との化学反応がさらに進み、寒冷化スパイラルを更に促進させる。寒冷化を抑制する要因がないと、極限状態にまで、寒冷化し、そして、地球全球が凍結していく。


 全球凍結のあと、どうして全球凍結から解放されたのだろうか。大気中のCO2が増大し始めたとしたのであれば、どこから大気中にCO2が供給されたのであろうか。

 全球凍結中も火山活動は続いており、CO2が少しづつ大気中にでていく。増えていった大気中のCO2が、今度は温暖化のトリガーとなって温暖化スパイラルがスタートする。

 炭酸ガスが増え始めると、H2OとCO2が、温暖化を加速させるという温暖化スパイラルに入いる。温暖化スパイラルを止めるものがなければ、超温暖化状態となる。

 約25億年前から5億数千年前の太古代では、全球凍結と超温暖化を繰り返していたかとそうではない。大陸分裂などの事件が起きないときは、風化作用が温暖化スパイラル及び寒冷化スパイラルを抑制していたと考えられている。

 温暖化が進むと風化作用が活発となり、大気中のCO2が消費され、温暖化を抑制し、寒冷化スパイラルのトリガーとなる。地球が寒冷化し、風化が減少する。火山活動によるCO2増加が風化によるCO2減少を上回ると、地球が温暖化し始める。このようにして全球凍結や超温暖化が避けられていると考えられている。(下図参照)


 3回は繰り返したと考えられている全球凍結と超温暖化は、地球上の生命誕生に大きく影響したと考えれており、この生命誕生ストーリーは研究者のみならず多くの人の興味をひいていることは想像に難くないが、その解明には未だ多くの時間が必要であろう。
 現在、確かなのは如何に述べることである。

 22億年前の全球凍結に続く超温暖化が起きたとき、大気中の酸素が増えている。6億年前の全球凍結及び超温暖化が終わったときには、大気中の酸素が急増していた。これはシアノバクテリアと呼ばれる光合成を行う藻が大繁殖したためと言われている。シアノバクテリアは、大気中のCO2を吸収して、光合成を行い、酸素をだす。6億年前の超温暖化を解消したのはシアノバクテリアによるCO2吸収だとも言われている。

 シアノバクテリアによる光合成には、すざましいものがある。大気中に大量にあったCO2を吸収・分解し、大気中にほとんど存在しなかった酸素をほぼ現状までの濃度にした。それだけではない。海中に溶けている鉄イオンを酸化させ酸化鉄にした。現在、地球上にある酸化鉄はほとんどこの時代にできたものだという。つまり、この時代以降、酸化鉄はできていない。地球上のほとんどの鉄をこの時代に酸化させたことになる。
 このことは、少なくとも3回全球凍結が起きた原生代(25億年前~5億数千万年前)には海にたくさんの金属イオンが溶けており、それが炭酸水素イオンや酸素と多量に化学反応していたことを示している。
 原生代の全球凍結と超温暖化の繰り返しは、5億数千万年前に起きるカンブリア爆発と呼ばれる多種多様生物の発生の礎になったのではないかということで、研究が進められている。

 カンブリア爆発以降、海嶺の火山からでてくる金属イオンのうち、特にCaイオンは生物によって消費される。

 ここで、強調したかったのは、気候というものは非常に不安定なもので、寒冷化スパイラルや温暖化スパイラルが起きやすいものである。原生代でおきた全球凍結と超温暖化は、寒冷化スパイラルや温暖化スパイラルのかっこうの実証例ではないかと考えられる。

 この寒冷化スパイラルや温暖化スパイラルは、原生代(25億年前~5億数千年前)特有のメカニズムではなく、現在にもあてはまるメカニズムである。

 原生代のシアノバクテリアと呼ばれる藻は、大気の状態を一変させ、カンブリア爆発と呼ばれる多種多様な生物の発生を引き起こした。そして、カンブリア爆発以降、地球には生物があふれかえった。あふれかえった生物が大気の状態や気候に大きな影響を与えたと考えるのは、普通の発想ではなかろうか。

 ここで掲げた全球凍結や大陸移動・集合・分裂は、数々の出版本やインターネット情報で調べることができる。
 全球凍結、及び、プリューム・テクトロニクスは、ここ十年とか二十年という、地学の世界では最近といえる時間レベルで市民権を得た学説であり、ホットかつ研究が進行中の話題である。全球凍結や超温暖化は、生命の起源にも関係する研究でもある。プリューム・テクトニクスは今後の地球の地殻変動予想とも関連しており両方とも興味深い研究テーマである。