2011年6月30日木曜日

まともなエネルギー政策を

 危機管理および安全保障は国の最大の仕事である。将来想定される危機に対して、危機が起きないように、輸送面、技術面、経済面など様々な角度から検討し、長期的にも短期的にも適切な対策を施し、安全を保障する。このような国家の重要事項は、国民は方針や概略を知っていて、政党が変わっても大きく変わらないというのが本来の姿ではなかろうか。行わなければいけない危機管理、安全保障はいくつかあるが、エネルギーもそのなかの一つである。
 今回の原発事故で、国は電気エネルギーを極端に原発に頼ろうとしていたことを、国民が広く知ることになった。民主党が採った方策は、自民党も吃驚するほどの原発依存であった。
 本来なら、今回の福島原発事故を受けて、長期と短期にわたってエネルギー政策が再検討され、変更が公表されるべきである。が、政府の方針がはっきりしない。はっきりしないというより、再検討もされず、変更する気もない。
 日本の電力エネルギーは、国の保護のもと、一つの地域に一つの電力会社のみが存在し、電力の安定供給を行ってきた。国と電力会社が一体となり、一面では高度成長を支えてきた。しかしながら、政治家と官僚、電力会社の三つ巴の電力利権構造は強固になり、その強固ぶりは「鉄の三角形」といわれている。各国が地球温暖化対策やエネルギー自給率の向上に再生可能エネルギー比率を高めてくるなか、日本は電力利権構造に変更を迫る再生可能エネルギーの普及に消極的で、ことあるごとにその芽を摘み取ってきた。太陽電池が普及しそうになると補助を打ち切り、風力発電が伸びかければ、規制を強化した。
 電力に関する既得権益が如何に強固であるか、もと官僚の岸さんというかたが、TVタックルで話された。電力会社の傘下には、たくさんの企業がぶらさがっている。半国営の電力会社は値切ることをしらない。製品を納める企業からみれば、これ程有難い納入先はない。従って、電力会社は多くの「票」を持つ。多くの票と多額のお金が政治家にわたる。政治家と官僚は、電力会社を守るための法律を作り、電力会社に補助金を渡す。官僚は、多くの天下りポストを得る。
 地球温暖化対策では、再生可能エネルギーの強化、発電送電分離、スマートグリッド技術などが必要であるが、既得権益者は既得権益の保護を第一優先とし、変化を忌み嫌った。岸さんによれば、スマートグリッドという言葉を出すだけで東京電力は露骨に嫌な顔をして、そんなことをすれば、大臣の首が飛ぶよと脅していたそうである。結局、自分たちの権益保護と地球温暖化対策を兼ねる原発への大幅傾斜を決めた。エネルギー安全保障の観点から一つのエネルギー源に集中させるような国はどこにもない。異論を唱える人も反対する人も少なかった。危機意識の欠如は、日本全体を覆う平和ボケ、高度成長ボケのなせるわざであろう。
 今回の福島原発事故は、日本における電力エネルギー政策の横面を思い切り引張たいた。日本だけではない。世界的にブームになりかけていた原発開発に水を差し、ドイツ、スイス、イタリアは、「脱原発」を明確にした。温暖化対策に積極的でないと日本では言われている中国や米国ですら、再生可能エネルギーの急速な普及を図っている。更なる温暖化対策と経済発展の両立に、原発を進めようとしている。
 原発推進を明確にしているアメリカ、フランス、イギリス、中国、これらの国では危機意識と危機管理知識・能力を持ち合わせている。万全でないとしても日本よりはるかに優れている。中国は強烈な危機意識とえげつないと思えるほどの危機対策意欲を持つ。
 日本に住むアメリカ人が、どこかの番組で、アメリカの子供のほうが、日本の総理より、危機意識と危機管理知識を持っていると言っていたが、笑えない現実だと思う。
 このままいけば、電力エネルギー政策のすべてを握る政治家、官僚、電力会社が既得権益にしがみつき、エネルギー政策や方針を何も変えず、ほとぼりがさめるのを待って、現状の原発政策を強引に推し進めるのではなかろうか。
  
 長期的なエネルギー政策はどうあるべきであろうか。
2050年CO2排出削減80%は、国際的な合意事項である。いつどこで、大きな地震や津波が襲ってくるかもしれない国土に、危機対策に無能な政治家が君臨する日本では、原発はありえない。全面的に再生可能エネルギーへ移行すべきある。再生可能エネルギーへ移行すると、国際紛争の種である資源問題も、地球温暖化や大気汚染などの環境問題もクリアする。放射線被害や原発へのテロ攻撃を心配する必要もない。
 長期的なエネルギー政策として、ある時期に原発を全廃し、再生可能エネルギーを主力にすることを明確にすべきである。
 
 短期政策を考える前に、現状をみてみる。現行法律では、原発は13ヶ月以内の定期点検が必要であり、再開には知事の合意が必要である。現実的には、地元住民の合意も必要であろう。地元の合意が得られないとすれば原発は来年の5月に全廃になる。そしていま、節電ムード一色である。これでは、ますます日本経済全体が活性化を失い、沈んでしまう。
 経済産業省大臣が、原発の再稼働へ向けて、佐賀県にお願いにいっている。これでは、エネルギー政策は全く変わらない。既得権益者を保護する今迄通りの原発と化石燃料を主体としたエネルギーになる。現に、国際社会へ日本のCO2排出が今後増えると公表しようとしている。これではあまりに無策である。
 
 短期政策は、長期政策を睨みながら、現実的な対応になる。CO2排出削減に向けて、化石燃料技術も頑張っている。石炭火力発電における二酸化炭素の貯留・保存技術(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)や天然ガスを用いてガスタービンで発電し、その廃熱で蒸気タービンを回して発電するガスタービン複合発電(GTCC: Gas Turbine Combined Cycle )、石炭をガス化し、ガスタービン複合発電を行う石炭ガス化複合発電(ICGCC: Integrated Coal Gasification Combined Cycle)などの技術がある。
 今回の電力会社の節電要請に対し、CO2排出が石炭より少ないとされるガスタービンによる自家発電を検討している民間企業があり、太陽光発電や風力発電を導入しようとしている一般家庭がある。
 企業におけるガスタービンによる分散電源、企業と一般家庭における再生可能エネルギーの普及を促進する法整備が必要である。
 現在、実質的に発電と送電を電力会社が一手に握っている。発電は一般業者が参入できるようになっているが、一般業者の送電使用料金が高いため、発電を行う一般業者の業績が伸びず、依然として電力会社の独占状況にある。このことから、発電・送電分離がいわれている。分離すると一般業者も安い送電料で送電ができることから、まずこの発電・送電分離を行う必要がある。送電も自由化すべきであろう。送電は送電と配電とに分けて、いずれ両方とも自由化する。まずは配電の自由化が望ましいと考える。
 一般家庭の太陽電池には、余剰電力買い取り制度がある。これをヨーロッパ並みに企業の発電も含めて、すべての再生可能エネルギーに拡大し、全量買い取りにすべきといわれている。孫正義さんなどは、余剰電力の買い取り期間が現在の10年では短い。全量買い取り制度にして、期間を20年にして買い取り価格も、以前の余剰買い取り価格の48円/kWhに戻すべきと主張している。現在は42円/kWhである。
 現状の法律は、一見、再生可能エネルギーを推進しているように見せて、実に様々な制限をつけて、再生可能エネルギーの推進を骨抜きしている。いつもの官僚の自己権益を守るための涙ぐましい努力の賜物である。
 
 政府は、時期を明確にして、原発全廃を宣言すべきと考える。そうしないと何も変わらない。将来は全廃するとしても、当面、原発は必要とするというような表現では、変化が生まれない。何も変わらない。
 原発全廃時期は、ドイツのように10年先では無理があるとしても、40年先では間延びする。「2030年までに原発全廃と再生可能エネルギー大幅移行」を宣言し、関連法案を整備するというのはどうだろう。再生可能エネルギーの普及を手ぐすねをひいて、待っている企業はたくさんある。
 小さなエネルギーをこつこつ積み上げていく再生可能エネルギーも、不安定なエネルギーをきめ細かく平準化させて使うスマートグリッドも日本人にあっている。大きな雇用創出につながるし、地方活性化の切り札でもある。
 再生可能エネルギーの研究で日本は先端を走ってきた。政府は普及の努力はしなかったが、研究開発段階では予算をつけてきた。
 再生可能エネルギーの種類は実に豊富である。よく知られている太陽光発電や風力発電、地熱発電以外にも太陽熱発電、潮力発電、波力発電、マイクロ水力発電、温度差発電、塩の濃度差発電など多種多様である。バイオ発電もいろいろある。ごみ発電に、糞尿発電、間伐材からつくるチップ発電などがある。日本での再生可能エネルギーの普及は電力利権構造が強いため、世界にかなり出遅れている。全量買い取り制度などの法改正や規制緩和などで再生可能エネルギーの普及にトリガーがかかれば、かなりの速度で日本は変わっていくと予想される。
 つなぎのエネルギーとしては、比較的CO2の排出量の少ない前述のガスタービン複合発電や石炭ガス化複合発電などが有望である。

 日本近海にはメタンハイドレードという化石燃料が多量に埋まっている。つなぎのエネルギー源として、この活用も考えるべきではなかろうか。このガスでガスタービン複合発電であれば、CO2排出もある程度抑制できるのではなかろうか。
 無駄の削減による無理のない節電やLEDに代表される省エネ技術も有効である。
 様々な手を打って、それでも電力がどうしても足りないということであれば、期限を限定して原発も止む無しとなるであろう。そのときは、将来の地震強度予想や原発の老朽度などから判断して、安全性の高い原発だけを再稼働することになるだろう。
 
 今回の福島原発事故は、誠に不幸な出来事であるが、これを契機に電力会社による独占支配と利権構造が崩壊し、再生可能エネルギーが普及することを祈って止まない。
 福島原発事故は世界を震撼させた事件であるにもかかわらず、政治家、官僚、電力会社からなる電力利権の「鉄の三角形」は、相当に強固であり、変わる気配がない。
 しかし、変わらなければ、再生可能エネルギービジネスは世界中で急拡大しており、この最大のビジネスチャンスを失うことになる。
 
 戦後、マッカーサーが日本人の精神年齢は12歳以下だと馬鹿にしたそうである。今、一般のアメリカ人から日本の総理の危機意識、危機管理知識はアメリカの子供以下だと馬鹿にされ、それに納得する我々がいる。利権亡者で、政争にのみ明け暮れする政治家に危機管理や将来ヴィジョン、まともなエネルギー政策を期待するのは、どだい無理があるのかもしれない。
 地球温暖化対策では、政府のかなり先をいく、多くの自治体がある。多くの企業が新しい時代へ向けて、様々な準備をしている。そして多くの国民が自分の意見が言えるネット時代がきている。時間がかかるかもしれないが、国民一人一人が自治体や企業、NPOやボランティア団体などを通して、ボトムアップ的に政治のレベルアップを図っていく必要があるのではなかろうか。

2011年6月14日火曜日

東日本復興ビジョン案(5)

5.次世代社会の先取り=東日本復興ビジョン 

いままで
東日本復興ビジョン案に向けて(1)提案をする意義 
東日本復興ビジョン案に向けて(2)危機的状態にある世界・人類文明 
東日本復興ビジョン案に向けて(3)危機脱出に向けたうねり=次世代社会の模索 
東日本復興ビジョン案に向けて(4)新旧社会の対比でみる各国の動き、日本の動き 

今回
1)温暖化に鈍感な日本人、温暖化ビジネスで大敗 
2)自然再生の重要性 
3)復興ビジョン=次世代社会の先取り+広領域な経済特区 
3-1)再生可能エネルギーによるエネルギー自給+工場誘致 
3-2)自然再生→安心安全を提供する農林水産業→食料自給率向上 
3-3)動脈・静脈バランス社会 
3-4)復興ビジョン実現にむけた復興手順 

1)温暖化に鈍感な日本人、温暖化対策ビジネスで大敗 
 地球温暖化対策の国際会議において、米国も中国も温暖化ガスの排出削減目標に堅く口を閉ざす。しかし、両国とも温暖化対策のキーテクノロジーである再生可能エネルギーの開発・普及に余念がない。一方、日本は、国際会議で、温暖化ガスの排出削減目標を口にするものの、政治家のパフォーマンスに過ぎず、再生可能エネルギーの普及は微々たるもので、電力エネルギーの約1%にしか過ぎない。
 地球の将来をみたとき、地球温暖化が破滅的であることは、ほぼ世界の常識である。国際会議では、それを知った上で、経済成長も無視できないとして、自国の利益をかけて丁々発止の駆け引きが行われる。そこに、温暖化の危険性を理解もしておらず、危機感も持たない日本の政治家が、しゃしゃりでて何の定見もなく、ぺらぺらとしゃべる。
 温暖化に対して、危機感のない日本は、世界の動向が見えておらず、個別企業が頑張っているとは言え、大きなビジネスチャンスを逃してきた。せっかくの大きな内需を失っている。中国・台湾・韓国の太陽電池メーカーが日本で既に販売を開始した。従来の電気製品ではあり得なかったことではないか。世界と危機感を共有できない日本は、世界の迷惑である。そして、日本は自分自身で経済チャンスの芽を潰している。
 温暖化は、大洪水や旱魃を引きおこしていることから各国の食料自給率の向上も必要としている。

2)自然再生の重要性
 地球温暖化対策は、温暖化ガスの排出削減だけでは不十分である。主たる温暖化ガスである二酸化炭素を大気から減らさなければならない。光合成で二酸化炭素を吸収する緑の増大、つまり、自然再生が必要である。山頂の水源林から、河川・海と流域全体で自然再生を行う。自然再生は、遠回りのように見えて、特に農薬、化学肥料(石油製品)を使わない農業に、育てる漁業に、ひいては食糧自給率向上に非常に重要である。自然再生が生物多様性に重要なのはいうまでもない。今後、日本ではゲリラ豪雨による洪水被害の増大が予想される。災害対策にも自然再生が必要である。斜面の急な杉や檜の植林は、根こそぎやられる。ダムは、自然の破壊者である。大洪水の場合のダムの決壊は被害を大きくする。洪水がなくともダムは直ぐに土砂に埋まり、その役割は短期間で急減する。老朽化すれば、逆に危険になる。今後予想される大洪水は正面から止められない、昔々の信玄堤や吉野堰のようにいなすのである。ちなみにダムによる水力発電は、世界的にクリーンエネルギーとはみなされていない。
 
3)復興ビジョン=次世代社会の先取り+広領域な経済特区 
 今回の福島原発事故で、いつ終わるとも予測のつかない被害を受けて、日本人は原発の危険性を知った。使用済み核燃料は、行き場がないことも知ってしまった。
 世界は、持続可能で、真に安心・安全な世界へ向けて、急転回しようとしている。逆に言えば、破滅的な危機が急接近してきていると言える。
 このようななか、被災地は、
 「持続可能な、真に安心・安全な次世代社会を世界に先駆けて実現する」
という大きな復興ビジョンで邁進すべきではなかろうか。
 世界が推進するエコシティー、スマートシティの大型版・発展版である。地域も被災地域だけではない、被災県全領域とする。そして、3県全領域を、従来、法律にとらわれない経済特区とする。様々な既得権も振り出しにもどす。

3-1)再生可能エネルギーによるエネルギー自給+工場誘致 
 先ずは、現在日本のかかえる危険な原発を、世界が懸念する温暖化危機を解消に導く、再生可能エネルギーの自給を目指す。さらには、太陽光発電に、地熱発電、マイクロ水力発電、洋上風力発電、瓦礫材・廃材・不要な間伐材利用のバイオマス発電などをあわせ、クリーンな再生可能エネルギーを謳い文句とした工場誘致を行う。誘致される工場はゼロエミションを約束できなければいけない。再生可能エネルギーの装置を作る工場であればもっとよい。日本の一日も早い原発削減に寄与できればすばらしい。地域全体は、もちろん、スマート・グリッド、スマート・エナジー最前線である。

3-2)自然再生→安心安全を提供する農林水産業→食料自給率向上 
 次は、自然再生をベースとした農林水産業の活性化による木材、食料の国内自給率向上。CO2の吸収を増加させるために、必要な水源林を確保するために、山津波や土砂崩れを防ぐ治水を行うために、森林整備を行う。
 放置されて、荒れた山林に、適切な間伐を行い、光を通し、風を通すと山は生き返るという。地中のバクテリアは増加し、林間には多種多様の昆虫や小動物が蘇る。木々は、地中からバクテリアが分解した豊富な栄養素を、大気中からたくさんのCO2を吸収し、大きく成長する。地中には、大量に水を蓄え、大気には沢山の水蒸気を放出する。豊かな森は、大気、河川、海の間を行き来する水循環を安定させる。一緒になって流れるバクテリアや植物プランクトンは、水を清浄化し、畠や海に栄養をもたらし、各種生き物を育む。いくら科学が発展しても、結局は自然の恵みで、我々は生かされており、豊かな自然は次世代社会の基本的なベースである。森林から、里山、河川、海へと自然再生を広げていけば、日本の林業復活、農薬・化学肥料を使わない、食べて安心・安全な農業促進、育てる漁業促進につながる。日本全体の農林水産業の模範となり、就労人口が大幅に減り、ガタガタになった日本の農林水産業が復活すれば、日本全体の食料、木材の自給につながっていく。

3-3)動脈・静脈バランス社会 
 現在社会は、ものをどんどん生産し、消費し、どんどん捨てる。おかげで世界中のゴミは増える一方で、多くの国がその処理に頭を悩ましている。動脈過剰で、静脈機能に欠けた社会である。日本各地で3R(リサイクル、リユース、リデュース)運動が行われているが、まだ端緒についたに過ぎない。現在、被災地は、瓦礫が山積みになっている。これらはエネルギー源、都市鉱山ともとれる。次世代社会では、あらゆるゴミは、生産資源、もしくは、エネルギー源になる。燃えるゴミは、発電機能付き焼却炉で処理される。糞尿はバイオ燃料である。食品ゴミはバイオ燃料か、肥料に化ける。金属類のゴミは、都市鉱山として使われる。全く再利用できないものは、いずれ淘汰されて、最初から作られなくなる。
 まずは、震災を逃れることができた周辺の市町村に発電機能付きゴミ焼却施設を作っていったらどうだろうか。

3-4)復興ビジョン実現にむけた復興手順 
  1. 復興ビジョン(=次第社会先取り)を国内に衆知させるとともに具体策は震災地をはじめ、広く英知を集める
  2. 被震災県の全体を経済特区とする
  3. 国の権限をできるだけ被震災県に渡し、復興ビジョン実現を迅速化させる。
    県は必要に応じて、市町村に権限を移す。但し、単なる個人的エゴや特定団体エゴは厳しく排除する
  4. 国は必要財源を確保する。
    無利子国債、赤字国債、増税、増札(単にお金を刷る)などが言われているが、増税は、経済を不活性化させるのでまずいのでは。
    経済は、誰もわからないほど、複雑といわれる一方で、+-の単純世界ともいわれている。自然災害で失われた損害額分、単純にお金を刷ってもよいのではないだろうか。日本経済、世界経済にも影響を与えないのではなかろうか。もし、お金の世界と物の世界は違う、刷ったお金は、結局は、だぶつくといわれるのであれば、刷った分のお金は復興したときに、燃やしてしまえばよいのではなかろうか。
  5. 県は、国の復興ビジョンを受け、被災地のみならず県の復興に向けて、復興ビジョンの具体案を作る。山頂から海まで、県全体を次世代社会に変えてしまう。
  6. 震災被害地自身の町作りは、どうするのか。広くアイディアを募ればよいが、まずは、
    • できるだけ住居は作らない。学校、市役所など市民生活に欠かせない公共施設は作らない。これら住居、学校、病院は高台につくる。
    • 被災地には、農場、海産品加工場、工場、さらには再生可能エネルギー生産場などにする
    • 被災地の道路は、整備しなおして、以前よりは、広くして、避難道路を兼ねるようにする。
    • 津波の防波堤は作らない。海岸線は、できるだけ自然のままに残すようにして、不必要にコンクリートで固めない。
      など


 いずれにしても、日銀に刷って貰ってでも、早くお金を用意して、雇用を確保して、被害者の不安を取り除く必要がある。次世代社会を目指せば、いくらでも仕事はある。これにそって、雇用を創出し、被災者の雇用を確保する。集落単位で雇用が提供できれば、ベターである。継続的な雇用か、一時的な雇用(時期をみて、もとの仕事に帰る)かは、被災者の希望にそう。雇用に応じて、住居を用意する。


 政府は、自ら陣頭指揮をすることを目指すのではなく、方針やビジョンを明確にしたあとは、現場が動きやすいように、環境作りに専念すべきではなかろうか。
 ビジョン策定後は、復興費の捻出、規制緩和に向けた経済特区作り。その後は、自治体への権限委譲や、全国から支援のしやすい法律改定などが考えられる。復興経済が順調にすすむような仕組み作りも必要になろう。
 もし、政府の動きが悪い場合は、被災自治体、被災者、復興支援をする各団体・個人もどんどん積極的に動き、中央集権的な権限をどんどん奪っていくべきではなかろうか。そして、不適切な、理不尽な種々の規制緩和を撤廃させていくべきではなかろうか。
 テレビや新聞メディアは、不毛な政局争いの報道はやめて、まともな議論ができるコメンテーターを集めて、今後どうすべきか、まとめあげていったらどうだろうか。科学や法律などもっと調べて、啓蒙的な役割をもっと推進したらどうだろうか。
以上

2011年6月9日木曜日

東日本復興ビジョン案に向けて(4)

4.新旧社会の対比でみる各国の動き、日本の動き 

東日本復興ビジョン案に向けて(1)はここ。 
東日本復興ビジョン案に向けて(2)はここ
東日本復興ビジョン案に向けて(3)はここ

 世界は、経済第一という点で、モノトーン化してきたようにみえる。各国ともGDPが増大していれば安心し、GDPが停滞もしくは減退していれば、非常に不安がる。経済成長のためならば、少々の不具合や齟齬は許されてしまう。なりふりをかまわない経済成長第一主義のように見える。
 一方で、世界は、地球温暖化や自然破壊、さらには化学物質汚染や人口爆発などを破滅的な危機と捕らえ、持続可能な社会へ向けて、変貌しようとしている。
 このような二つの流れの中で、各国はどのように動こうとしているのか、かなりの温度差が見られる。
 ヨーロッパは、温暖化に、かなりの危機感を持っている。現実の猛暑、寒波、大洪水など温暖化被害を肌で強く感じているからであろう。「温暖化対策と経済成長の両立」を標榜している。再生可能エネルギーの全量買い取り制度や排出権取引制度などの温暖化対策も効を奏しており、太陽電池のQセルズや風力発電のヴェスタスなど急成長してきた。再生可能エネルギーの雇用を支える職業訓練も充実している。エコシティ、エコタウンの実証など盛んに行われている。ドイツなどは3R(Recycle、Reuse、Reduce)も進んでいるし、汚染化学物質規制もEU主導である。EUとして、複数の財政困難な国家を抱え、植民地時代のつけである移民問題などをかかえたりしているが、地球温暖化に対する危機感は相当なものがあり、国際社会を引っ張っていこうとする強い意志が感じられる。原発は、温暖化対策として位置づけが大きくなっていたが、福島の原発事故で、ドイツとスイスは原発廃止を決めた。

 米国は国策で温暖化対策としてグリーンニューディールやモーダルシフトを進めている。アルゴア元副大統領やアースポリシー研究所レスターブラウン所長などは、温暖化を非常に危機だとして積極的な啓蒙活動を行っている。現実に竜巻やハリケーンの巨大化、西海岸の山火事の頻発など温暖化被害は増大している。ビジネス界は、温暖化対策重視と軽視の真二つに割れている。対策推進派は、再生可能エネルギーを大きなビジネスチャンスとしてとらえ、積極的に事業展開を行っており、太陽光発電も風力発電も急速に普及している。スマートグリッドもIT技術が応用できるとのことで、グーグルなどIT企業が積極的に取り組んでいる。電気自動車の開発や普及にも積極的である。その一方で、経済成長第一主義者や石炭・石油ビジネス業界も黙ってはおらず相当な相克がある。原発は今後も継続するとのことであるが、米国では再生可能エネルギーの技術開発・普及が今後も加速度的に進むと予想される。

 中国は、国営資本主義でなりふりかまわない経済成長を邁進中である。環境汚染も相当にひどいと聞く。人権軽視、検閲強化など自由主義圏の世界からは考えられない振る舞いであり、覇権拡大意識も強烈である。南沙諸島、西沙諸島さらには尖閣列島の領土主張、インドを包囲する真珠の首飾り作戦などなど。世界中の資源あさりは衆知の事実である。将来の食糧不足に備えたアフリカ諸国での農地確保、片道切符での農夫の送付など、やりたい放題の感がする。  中国では北東地方の旱魃がひどく、新彊地区の氷河も目に見えて後退しているなど、温暖化被害も深刻化している。砂漠も拡大しており、数年で北京に押し寄せるのではないかと心配されている。このため、中国政府は植林をはじめとして自然回復にも積極的で、「緑の長城作戦」「退耕還林」「退耕還草」「季節的休牧」などを行っている。再生可能エネルギーにも積極的で太陽電池や風力発電が急速に普及している。太陽熱利用の温水もブームになっている。電気自動車の普及に向け、給電所が急ピッチで広がっている。エコシティの実証実験も積極的で日本を含む各国が技術提供や共同開発を行っている。都市鉱山も着々と進めている。次世代社会へ向けて中国も大きく動いている。中国の原発は、あれだけ広い土地がありながら地震多発地帯に建設されている。これは改善されると予想される。

 オーストラリアは、温暖化対策には必ずしも積極的ではなかったが、旱魃や山火事の頻発など温暖化被害が大きくなり、状況が一変した。温暖化対策が選挙戦の争点となり、温暖化対策推進派が勝利した。しかし、炭素税の導入に対しては、現段階で反対意見のほうが多いとか。ここでも温暖化対策と経済優先の押し合いがある。

 日本は、世界的にみて、温暖化に対して危機意識が非常に希薄である。世界的な意識調査ではほぼ80位と非常に低位である。温暖化対策の国際会議では、毎回、発言が後ろ向きであるとして、”化石賞”を貰っている。危機意識が低い第一理由は、なんといっても温暖化被害が他国と比べて軽微であるからであろう。被害は少ないといっても、九州産のコメは温暖化の影響で白濁化した。商品にならないということで品種改良がされ、既に改良品が出回っている。ミカンもサクランボも影響を受けている。農家だけではない、漁師が獲る魚はどんどん南方系になっている。専業の第一産業従事者が少ないので、声があまり聞こえてこないのだろう。
 ゲリラ豪雨被害で死者が増えても温暖化の危機意識を持たない。温暖化に対して、危機意識を持っていないから、京都議定書の遵守や排出権取引は、単にビジネスの障害にしか見えない。
 危機意識が薄い他の理由として、都合の悪いことは、見たくない、聞きたくない、考えたくないという国民性にあるとも言われている。

 日本は、高度成長の夢いまだ覚めやらずで、高度成長が続く中国、韓国を恨めしそうに眺めている。そして、夢よ、もう一度ということで、工業製品で稼ぎ、その他は輸入という旧態依然としたビジネスモデルに固執し、経済成長ばかり気にしている。高度成長ボケは、世界の次世代へ向けた取組が目には入っても、耳で聞いていても、思考に入らず、ましてや方針になっていない。過去の幻影を追っているだけである。
 資源は輸入が思うようにならないということで、少しはあわてているが、食料も木材も輸入できなくなるかもしれないということまで、考えられていない。

 日本の国際会議での温暖化ガス排出削減宣言は、国内外で、真剣さのない政治家の単なるパフォーマンスとしてしかとらえられていない。本来の持続可能社会つまり安全社会という一面を忘れている。CO2排出削減の世界へのつじつま合わせと経済成長のみを考慮して、スマートグリッドなどの新技術を使わない従来技術でできるという安易な発想で危険な原発に極端に頼ろうとしていた。今回の福島の事故で、原発の問題が浮かび上がってきた。使用済みの核燃料がたまりに溜まって、行き場がないことや日本が地震の巣であり、今後も事故の可能性が大きいこと、安全技術管理が不十分であることがわかってきた。ウラン資源も限りがある。エネルギーだって、いつも簡単に輸入できるとは限らない。石油をめぐって国際社会はいつもきな臭い。

 日本は従来型の経済第一主義一辺倒で、温暖化や食糧難など世界的な危機へ向けた取組が全く遅れている。日本での再生可能エネルギー普及は、たったの1%である。全くの出遅れである。大きな内需を失っている。そのせいで温暖化対策をビジネスチャンスとしてとらえた企業はしかたがないから、他の国の温暖化対策推進に便乗して頑張っている。輸出の増大ということで政府がはじめて後押しをする。非常に奇妙な構図と言わざるを得ない。

 危機は温暖化だけではない。食料も、木材も、エネルギーも、自然も危機である。対策は各国とも自然を涵養して、食料も、木材も、エネルギーもできるだけ自給して、持続可能にしていくことである。  日本は世界の危機を知り、東日本大震災の復興で次世代社会のありようを世界に先駆けて実現すべきではなかろうか。  漁師が山に木を植える運動の起点は、仙台の漁師である。岩手県葛巻町は再生可能エネルギーに注力し、電力の自給率は180%、エネルギー全体でも78%とのことである。最も難しいとされたリンゴの無農薬栽培に成功した木村秋則さんは青森県である。東北には、次世代の先鞭がある。もともと日本人は自然涵養で優れたDNAを持ち、3R精神に富んでいた。昔の日本人に立ち返り、東北大震災のあとに、一日も早く原発のない持続可能な次世代社会を実現して欲しいと思う。

次回 
5.次世代社会の先取り=東日本復興ビジョン