先日、英語の勉強にと思って、テレビでCNNのニュースを見ていたら、日本の電力に関する話に移った。円グラフがでた。2020年の日本における再生可能エネルギーは3%。 それに対して、ドイツの2020年の再生可能エネルギーは、40%以上 と言っていた。 キャスターは、やおら古い電卓を手にした。シャープという言葉が聞き取れた。これはシャープの太陽電池付き電卓である。古くから技術を持っているのに、何故、再生可能エネルギーは、少ないのか。ドイツのように再生可能エネルギーに移行すれば、原発はいらないのでないか。英語そのものは聞き取れなくても確かにそう言っている。5分足らずで違う話題に移っていった。
日本の電力に占める再生可能エネルギーは2009年1.1%、ドイツのそれは2009年16.1%。
日本の電力に占める原発は、2009年29.2%、2019年41.0%予定。
日本の電力における再生可能エネルギーは、現状ほぼ1%で、10年経っても3%。これでは誰がみても、日本政府は再生可能エネルギーなんか ”さらさら” やる気はない様に見える。口ではいろいろ言っても、数値がその気がないことを明確に物語っている。CO2排出削減が世界的に謳われると、再生可能エネルギーには見向きもせず、ここぞとばかりに原発の増設を計画したようにみえる。 現状、54基に対して、計画では2030年までに14基増設される。これでは外国メディアに指摘されるまでもなく、おかしい。なにかあると疑いたくなる。
以下は、私の邪推である。
政治家と企業と官僚が、癒着している。おいしい天下りがたくさんある。政治家も甘い蜜をたっぷりと吸っているに違いない。どんなからくりになっているのだろうか。
発電コストを調べてみると原発でつくる電気が、一番安い。多分、原発を廃炉にする費用や使用済み核燃料の処理費用、開発費用などは含まれていないだろう。更に、今回のような福島原発事故の処理費用は入っていない。
最初、電気料金が設定されたときは、原発は未だ存在しておらず、火力や水力の発電費用で計算されているはずである。そこに安い原発が入ってきた。どうなるか。市場の自由競争になっていない電力会社は電気料金を下げない。多大の利益がでる。政府は黙認する。
どれだけの利益アップとなるか簡単に計算してみよう。火力や水力などの発電コストと原発の発電コストの差は~5円/kwh。日本に原発は54基、1基あたりの発電能力は0.9GW=900,000kw。原発の稼働率を70%とする。
年間の利益アップは、
5円/kwh x 54基 x 0.9GW/基 x 24h/日 x 365日/年 x 70%=1.5兆円/年
となる。
原発が40年間続けば、60兆円。電力会社はおいしいし、官僚も政治家も黙って指をくわえていない。本来なら日本全体の了承がいるはずの原発の新設を、市町村とだけ交渉し、多額な交付金を餌に、了解を得る。了解を得たら、最後、ここぞとばかりにできるだけたくさんの原子炉を詰め込む。福島では第1、第2を合わせて10基、柏崎刈羽では7基、安全性は、どこかにすっ飛んでいる。安くできれば、できるほど利権は膨らむ。
これが、私の邪推です。
邪推はさておき、安全性に関しては、地震や津波以外にテロをも考慮すべきである。相応の出費が必要であるのに「安全神話」が歳出を抑制した。使用済み核燃料に関しては・・・、これは厄介である。破棄と再利用という二つの選択肢がある。再利用は、使用済み核燃料を再処理して、もう一度だけ使用する方式と「核燃料サイクル」として、何度でも使う方式がある。破棄する場合は、使用済み核燃料を水冷する中間処理と、そのあと空冷し、地球深く埋め込み、コンクリートで固めるなど最終処理をする必要がある。
日本は再利用をメインストリートとしている。しかしながら、一度だけ再処理して使うための再処理工場は、遅れに遅れて2年後完成予定で、現在はフランスに再処理を委託している。何度でも使う方式は、現在の核兵器に使われるプルトニウムが主体であり、冷却に金属ナトリウムを使うなど、危険きわまりない。そのため、ほとんどの国が開発を中止している。
福島原発の事故処理で先行きが見えないなか、その実験炉である「もんじゅ」の再開をどさくさに紛れて、福井県知事が了承し、実質的に再開が決まった。この技術は順調にできたとしても実用化は2050年である。危険きわまりないといわれる技術の実験炉が、国民の目に隠れるかのように、こっそりとスタートOKになった。又、心配の種が一つ増えた。
使用済み核燃料の再利用をあてにしていることから、破棄はおざなりになっている。使用済み核燃料を冷却するプールが満杯に近づいている。ましてや、最終処理は目処すらたっていない。
破棄も再処理も先が見えていないのに、単に、日本の技術はすばらしい、日本の技術はどこよりも勝っているという単なる「技術神話」だけがある。きちんとはじきだせば、原発のコストは、非常に高くなると予想される。
「安全神話」と「技術神話」が一人歩きし、原発の発電コストが、「安く」「安く」なっている。政府は、これら「神話」の最も熱心な信奉者で、CO2排出削減を格好の理由とし、国民の生命を賭けて、原発を推し進めてきた。
今回の福島第一原発の事故を受けて、ドイツやイタリアはいち早く、建築中の原発をキャンセルした。ドイツは更に1980年以前に建築した原発7基を3ヶ月稼働停止にし、安全点検に入った。中国は重慶市と湖南省の原発建設プロジェクトを凍結した。インドやタイは原発建設計画の見直しにはいった。しかるに日本は原発政策の継続を表明した。そして、CO2排出削減の目標達成が無理だと表明した。まちがいなく国際社会にとって日本は不可解にうつっている。世界の空気が読めていない。CO2排出削減は、国際会議での駆け引きで一見、消極的にみえる米国や中国でさえ、温暖化に対し、強い危機感を持って取り組んでいる。再生可能エネルギーに多くの力を注ぎ、更にCO2排出を減らすために原発を推進しようとしている。そのようなかで、早々とCO2排出削減の目標達成は無理だと表明することは、世界の流れを理解していないことを自ら証明したようなものである。来るべき社会は、再生可能エネルギーを主体とした低炭素社会である。各国政府も各国国民もそれを見据えている。日本はそうではない、温暖化問題を軽視しているように見える。このままでは次世代社会に大きく乗り遅れる。
いずれにしても、時代が変化するとき、その時、利権を持っている組織や人々が最大の抵抗勢力になる。世界が再生可能エネルギーへ向けて、大きく舵をとっているとき、日本では電力会社と政府や政治家が大きな抵抗勢力になっている可能性が高い。
再生可能エネルギーは、まだコストが高いとか、不安定な電力をコントロールするスマート・グリッド技術が未熟であるなどの問題も残っているが、数々のメリットを有する。
- 地球温暖化の元凶である二酸化炭素を排出しない。
- 化石燃料が排出するSOX(酸化硫黄物)やNOX(酸化窒素物)のような汚染物質をださない。
各国ともエネルギーの自給率をあげることができる。
- 古今東西、エネルギーを巡って国際紛争が絶えないことから、自給率向上は、国際紛争の低減に寄与する。
- 雇用を促進する。
風力、太陽光、太陽熱、地熱、潮力、波力等々バラエティに富んでいる上、小型分散型であり、スマート・グリッドも様々な手法があるなど、雇用は多い。
- 小型、分散であることから、自然災害に強い。
個々の装置単位でみると、災害に弱くても、災害が起きたとき、多くの装置が無傷で生き残る可能性が高く、全体でみると災害に強いと言える。
- テロや人災に強い。
小型・分散システムは誰も襲おうとは思わない。ミスや故意で人災があったとしても、小型・分散システムでは被害が軽微である。
- 地方の活性化につながる。
きたるべき社会は、間違いなく、再生可能エネルギーを主体とした低炭素社会である。日本が、そのような社会を目指すことを表明し、努力すれば、国際社会も日本の復興を今後とも支援し続けるであろう。そして、原発が無い世界を実現し、広い土地がありながら、わざわざ地震地帯に原発を建てている中国や、日本と同じような地震多発地帯であるフィリピンに原発がなくてもやっていけることを示すべきだと考える。
もし、日本が原発推進を今後も継続すれば、国際社会からは不信感をもたれ、近隣諸国からは白い目でみられるだろう。万が一にでも、再度、原発事故を起こせば、日本は国際社会から見下されるだろう。そして、今は、米軍が援助以外にも警備の役割を意識的に担っていると言われているが、そのような援助もなくなり、抜け目のない近隣諸国から蹂躙されるだろう。
身近な人も含めて、多くの人が、原発を捨てて、再生可能エネルギーへ移行すべきだと言い始めている。しかし、抵抗勢力は、上述したように、かなり強力である。かなりの決意を持って、抵抗勢力を押さえ、原発を全廃し、再生可能エネルギーに移行すべきと考える。
(参考)
ドイツの再生可能エネルギー情報 (2000年~2009年)
http://en.wikipedia.org/wiki/Renewable_energy_in_Germany
日本の2010年エネルギー白書
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2010energyhtml/2-1-3.html
katsu fujii さん
返信削除朝日ニュースター「ニュースの深層」17日放映分ノンフィクション作家広瀬隆さんのことが話題です。Youtube でも見れます。原発の危険性とともに原子力に依存しなくても何とかやれるといった持論を展開されています。(Waki)