2011年4月14日木曜日

日本に原発はあってはならない


 日本に原発はあってはならない。そう確信している人、よくはわからないが、原発に不安を感じ、原発はないほうがよいと思う人、原発はないにこしたことはないが、エネルギーや経済を考えればしかたないという人、いずれにしても個人個人に密接にかかわるエネルギーや安全に関する大問題である。そして、今後どうするか、一人一人に投げかけられる問題であり、いずれそう遠くないときに、日本全体として答えを出さなければならない問題である。
 
日本における原発を考えてみる。

  1.地震大国でありながら原発大国であり、計り知れないリスクを抱えている。

 日本は、太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレート、ユーラシアプレートと4つものプレートに隣接もしくその上にあり、地震の巣の上と言われるほど地震が多発する地震大国である。 そして、狭い国土に多くの人々がひしめきあって暮らしている。(国土面積61位、人口9位、人口密度5位) このように人口密度の高い狭い国に54基もの原子力発電がある。(原発保有基数3位)
 近年、世界的に大地震が頻発しており、日本でも確かに増えていると感じさせられるものがある。 人々の記憶に残っているであろうと推察される最近の地震をあげてみる。 1993年奥尻島地震M7.8、1995年阪神淡路大震災M7.3、2000年鳥取県西部地震M7.3、 2004年新潟県中越地震M6.8、2007年新潟県中越沖地震M6.8、今回の2011年東日本大震災M9、続いて起きた長野県北部地震M6.7。
 地震学者は口を揃えて、東海地震、南海地震、東南海地震が、そう遠くない将来に必ず起きると予測している。 大地動乱の時代と呼ぶ地震学者もいる。 4月8日の日経新聞は、「東海、東南海、南海の3つのプレート型地震が連動して起きると、宮崎県沖の日向灘でも地震が同時発生して巨大地震となる恐れがあることが7日、文部科学省の研究プロジェクトの成果でわかった。想定4地震の断層は長さ700キロに達し、マグニチュード(M)9クラスの巨大地震になる可能性もある」と報じた。

 日本の原発は、ほとんどが老朽化している上に、一カ所に原子炉が集中している。若狭湾では14基、福島は第一と第二を合わせると10基、柏崎刈羽原発は7基である。福山第一は6基で、集中していることの危険性は、大震災後のTV報道をみれば、一目瞭然である。 更に、原子炉建屋の最上階で、使用済み核燃料が水冷されている。使用済み核燃料を原子炉のすぐそばに置くことの危険性も、連日の報道から誰の目にもあきらかである。

 いずれにしても、最も危険な場所(世界トップクラスの地震多発地帯)に最も危険なもの(原子力)が、最も危険な方法(原子炉の集中と原子炉建屋内での使用済み核燃料の保管)で設置・配置されている。

2.見通しのくらい使用済み核燃料の処理

 原発は、核燃料の核分裂でエネルギーを得て、発電を行っている。 核燃料ウランは分裂して、大きなエネルギーと放射線をだしながら、元とは違う物質(セシウムやヨウ素など)になる。 このときのエネルギーが大きいので、効率の良い発電として使われる。
 核分裂を終えた核燃料が使用済み核燃料である。これがやっかいである。今度は分裂ではなくて、放射線を出して違う物質になりながら、崩壊する。崩壊エネルギーは高くないので利用されることはない。とはいえ、崩壊は、核分裂生成物によっては数万年にもおよぶ非常に長い期間にわたり、放射能と崩壊熱を出し続ける。意図しないのに再度、臨界点を超えて核分裂を開始する可能性があるので、冷やし続ける必要がある。現実的には、長期にわたる水冷で、ある程度冷やす。その後は空冷で冷やす。そして温度が充分下がったことを確認して、ガラス化するなど固化して、地下深く埋め込む。このようにして廃棄するには約10年はかかると言われている。

 別途、方策として、使用済み核燃料を再処理して、再度使える様にする方法がある。繰り返して、使用することができれば、核燃料の問題は、大きく改善される。フランスは、使用済み核燃料をもう一度生き返らせる再処理技術を持っている。この技術でできた核燃料がいわゆるMOX燃料である。このMOX燃料は既存の原子炉で使うことができる。日本は、この再処理をフランスに依頼し、MOXを作ってもらい、輸入して浜岡原発や福島第一原発の一部で使っている。 

 使用済み核燃料を何度でも繰り返し使う技術は、どの国も実用化できていない。 日本はこの技術がいずれできることをあてにして、使用済み核燃料を原子炉のそばで水につけて保管している。廃棄する方策はとっておらず、当然その技術は進展していない。使用済み核燃料の保管スペースに余裕がなくなって、密度をあげて保管されているので、危険度は増している。(昨日、4月13日発生、福島第1原発4号機の異常原因) 

 日本の再処理技術は、未熟で再処理工場建設計画は、ほぼ20回にわたる延期を繰り返し、建設予算の見積もりもどんどんあがり、今では2兆円以上になっているとのことである。今の計画では2年後にできることになっている。
 何度でも繰り返して使う技術も検討されている(もんじゅと名付けられた原子炉で実証実験の予定)が、これも遅れに遅れて、こちらは見込みすらたっていない。   使用済み核燃料を廃棄する方策は、全くと言っていいほど進めておらず、本命とされる核燃料を繰り返し使う技術は遅々として進んでいない。 一方で使用済み核燃料はどんどん増えていっている。
 外国はどうか。日本ほどひどくはないが、悩みは共通しており、外国に頼ることもできない。(わずかにMOX燃料は、フランスに頼っている) 使用済み核燃料の最終廃棄場所は米国もロシアも用意できていない。

 日本における使用済み核燃料は、逃げ道(廃棄)もなく、前方(繰り返し使う技術)も塞がっており、追っ手(使用済み核燃料の増加)がどんどんせまっている、という状況である。逃げ道に対しても、前方に対しても、日本には技術がある、日本の技術はすばらしいという、現実とはかけはなれた「技術神話」がまかり通っており、お寒い現実を覆い隠している。

3.日本には危機意識が欠乏しており、ましてや危機管理意識はない。日頃からほとんど考えていないので、重大事故発生時の対策は付け焼け刃で、後手かつ不十分

 日本は、明らかに、今でも平和ぼけ、高度成長ぼけから抜け出せていない。 このところ近隣諸国から頬っぺたに平手を食らわされて、わずかに変わってはきているが・・・。
 いくつもの危機が、日本を、そして、世界を襲っているが、日本はあまりにも無頓着である。 見て見ぬふりなのか、いや、ぼけ過ぎて見えていないような気がする。
 いくつもの安全保証を考えなければならないのに、ほとんど考えられていない。危機を感じていないから、考えられないのだ。ましてや、危機が起きたときの管理を、考えているはずはない。テロや核攻撃に対する処理を本気で考えている国とは雲泥の差である。
 今回の原発事故に対しても、事の重大性に気がついていないような気がする。日頃全く考えていないので、当然のことながら、対策は付け焼け刃である。命をかけた仕事を、そのように訓練されていない一般のサラリーマンの使命感にのみ頼るような状態になってしまった。 緊急にいろんな分野から手厚いサポートが、要るであろうに、後手、後手に回り、個々の対策が不十分である。まさに試行錯誤の連続、モグラたたきの感は否めない。1ヶ月たっても、深刻さが増すだけで、解決の目処すらたっていない。

 今回の事故の被害は、既に甚大である。 今後の健康被害、経済被害は、計り知れない。 日本国民のみでなく、世界に与えた精神的ストレスは如何ばかりか。時間とともに日本たたきが増大するのは目に見えている。

 日本の原発推進者は、国民の生命と安全を楯にして、技術的な綱渡りをしている。賭をしている。彼らに「何か隠しているのではないか、情報公開を」と迫っても埒があくはずもない。
 政治主導と謳って、自らの無能力をさらけ出した政治家が、原発事故の処理を主導している。近隣諸国からあなどられ、管理能力不足が世界の公然(?!!)となった日本の政治が、最大級の国難処理にあたっている。おおいなる国難、世界の不幸と言わざるを得ない。

 原発の技術は、急進展しない。安全管理意識も安全管理手法も急展開しない。今の日本には、原発を保持する能力はない。地震大国、小面積国、多人口という日本の特殊事情を合わせて考えると日本は原発を持ってはならない。

 世界を震撼させる放射線障害や日本の原発事情は、知れば知るほど、「経済を考えるとしかたない」から「不安を感じる」へ、更に、「日本に原発はあってはならない」に必然的に変わる。

 本で、これ以上原発を増やすことは、国民世論が許さないであろう。しかし、それだけでは危険な既存の原発が残り続ける。少々安全対策が強化されたとしても、危険性はほとんど変わらない。
 今後、積極的に、原発の全廃を求めていく必要がある。

 原発はなくとも、前回コメント頂いたように再生可能エネルギーがある。

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