能力開発(3)英語力
英語はたくさん勉強しているはずなのに、英語ができない。中学、高校と勉強の半分近く英語に使った。大学では、専門書として英語の本を紹介され、それもある程度は読んだ。英語の論文も読んだ。でも英語はさっぱりである。英語をネイティブにする国の5歳児にも及ばない。開発途上国の、それもかなり遅れている開発途上国の子供がマイクを向けられて英語でどうどうと受け答えしている。私は、あんなに答えることはできない。
小澤征爾さんは、パーティや会合にほとんど出席しなかったと日経新聞の私の経歴書で書いておられた。理由は言葉ができなかったとのこと。え~っと彼ほどの国際人がと信じられない。ずっと前になるが布施明さんがオリヴィア・ハッセーとの離婚理由を聞かれたとき、言葉が・・と顔が曇った。 私だけではない、日本人は英語が下手である。泣けてくるほど下手である。多分、本人が思っている以上に下手である。
一方、日本人は日本に来た外国人が短期で日本語をしゃべるのを聞いて驚く。誰もが日本語が上手な欧州人、アジア人、アメリカ人の名前をすぐに言うことができる。日頃馴染みのない国の外国人も日本語がうまい。ボビー・オロゴン(ナイジェリア人)は日本語でギャグる。 にしゃんた(スリランカ人)は、川柳クイズで日本人と対等に渡り合う。ゾマホン(ベナン人)は早口でしゃべくりまくる。
何故このように彼我の差があるのか、次の話を聞いて、なるほどと、英語にまつわるいろんな疑問が解ける。
「英語の周波数帯域は非常に広いのに対して、日本語の周波数帯域は非常に狭い。日本人の場合、幼少期に、日本語の周波数帯をはみ出した音をノイズとして認識し、高周波領域を除外するように脳が出来上がってしまう。英語が持っている高周波領域は、日本人の脳はノイズとして受け付けない。」
日本人の英語で最大の問題は英語が聞き取れないことにある。どの国の人も自国語の新しい言葉はまず耳で覚える。生まれたときからほとんどの言葉は耳で覚える。
会社で同じ部署にいた中国人は、日本語はほとんど聞き取れると言っていた。テレビのウルルン滞在記という番組では、タレントが世界中にでかけて現地の家族に入り込んで一緒に生活をしていた。タレントが言う日本語はすぐに真似られていたが、その逆はなかった。日本語は非常に聞き取りやすい言語である。これが外国人が短時間で日本語がうまくなる理由である。
琴欧洲にアナウンサーが、どうして日本語がうまくなったのかと聞いたら、赤ん坊と一緒と答えた。外国人は、全く日本語を知らなくても日本に来たら赤ん坊のように日本語を聞いて覚える。しかし、成人になった日本人が外国に行っても赤ん坊になれない、赤ん坊以下である。赤ん坊なら英語の高周波成分は聞き取れるが、日本で育った成人の耳は英語の高周波成分を拒絶する。
若い人が他国に比べて、外国にでかけていかないというのもうなずける。言葉が聞き取れないから、腰がひける。
日本人にとって、英語のヒアリングはたくさんのノイズを聞かされるのと同じなので、聞き取れない以外に快適ではない、むしろ不快である。不快であるから、英語を聞かない。英単語の覚えも悪い。勉強も遠ざかるなど、悪循環である。英語はあれほど勉強したといいながら、実は本人が思っているほど勉強していない上に、勉強が不効率となって、英語離れを起こしている。
日本人が英語をうまくなるためには、英語に対して、まず耳を作るべきであろう。つまり英語を聞き取る訓練が最優先されなければならない。
この耳の問題があるので、何歳から英語を習うべきかという問いに対する答えは、かなり難しい。いろんな分野の人が協力しなければ、答えがでない研究分野であろう。
個人的には、小学生の時は、しっかり日本語を勉強し、英語は中学からでよいと思っている。但し、教える方も教わる方も、英語は日本語にない高周波数を含んでおり、その高周波を聞きとる必要があることを認識して、まずはヒアリングを重視した教え方、習い方をすべきであろう。
いまでは、英語のヒアリングはPCやスマホなどいろんな機器を通して簡単にできる。 一番良いと思うのは英語の字幕が流れる英語の映画やTV番組を見ることである。何度も見聞きすることにより自分が聞き取れない言葉を把握し、その言葉を聞き取れるようにする訓練が良いと思う。
日本人は英語に堪能になり、世界に向けて英語でどんどん意見や考えを発信する必要がある。そうしないと、スポーツの世界で日本人に不利になるようにどんどんルールが変えられていったが、そのようなことが、いろんな分野で起こりうる。
もし英語が聞き取れる教育や訓練が行なわれれば、日本人は勤勉だから、人口の半分以上の日本人が英語に堪能になれる。周りにいる普通のおじちゃんやおばちゃんまでも英語がうまくしゃべれる。そうなれば、日本人の国際的地位は確実に上昇する。ビジネスチャンスも広がる。
(次回の能力開発、英語力続編です。)