健康(4)– 虫垂炎
20代後半夜アルバイトをしていたら、いつもとは全く違う胸焼けを感じた。これは尋常ではない。アルバイトを早めに切り上げてアパートに帰る。今までとは違う汗がでる。これが世にいうあぶら汗か。やたらと気分が悪い。手が勝手に体中をまさぐりだした。手が右の下腹に触れた途端、ぴりぴりっときた。盲腸だ。次の朝、隣の知人に付き添ってもらって、腎臓結石でお世話になった病院へいく。「先生、盲腸です」「こら!自分で決める奴がどこにいる。何の病気か検査する。」 しばらくして先生が帰ってきた。「おまえの言うとおり盲腸だ。」
部分麻酔の手術で、先生が切り取った盲腸をみせ、汚い盲腸だという。他の盲腸を見たことがないので汚いかどうかわからない。鮮やかな黄色い塊で、これが汚い?と思った。看護婦さん二人が手術台かつ移動車から私を寝台へドスンと落とす。痛い。あの二人の体の大きさではやむを得ないと思ったが、そっと下ろして欲しかった。しばらくして先生がやってきた。「おまえは大袈裟だ。手術中おまえほどわめいた奴はいない。麻酔が効いている。そんなに痛くないはずだ。足をあげてみろ。あがらないはずだ。」 「先生、いくらでもあがりますよ。まだあがりますよ。でも傷口が痛いのでこれ以上はあげられません。」先生は黙って立ち去っていった。
ずっと以前に盲腸手術を経験した先輩が、麻酔注射が非常に痛かったと言っていた。私の場合、麻酔注射は少しも痛くなかった。手術前に毛を剃られる。その時、看護婦さんがちょこんとつまむので、大きくなると聞いていた。そのときが近づいても痛くて、とても大きくなる気がしなかった。サービスで大きくしないとまずかなと思ったが、看護婦さんはズボンを少しだけ下ろして上の方をわずかに剃っただけだった。
麻酔が切れたあとは、痛くて笑えないので、笑わされると大変だとも聞いていた。これはその通りだった。